
現在、日本の銀行預金は超低金利です。銀行からお金を借りても利子が少なく済むため今のうちにローンを組んでマンションを購入しよう、どうせ買うなら新築が良いなと考えている方もおられるでしょう。
ですが、マンション購入の判断はどのようにしていますか?スーパーでキャベツ一つ買うのに「こっちかな、あっちかな」と順番に手に取って考えて買うのに、数千万円もする人生で最も高額な買い物であるマンションは結構勢いで購入している人を目にします。
それはなぜだと思いますか?
キャベツの場合は、おいしいキャベツの特徴やポイント、購入する機会があるため経験も重ねて知識とスキル(目利き)が養われています。
しかし、マンションの選び方は人から教えてもらっていないし、人生でなんども経験することではないためにスキルが育ちにくいのです。それを補うには知識が必要です。
そこで今回は、マンション管理のプロが考えるコスパ最強の新築マンションの購入ポイントを解説したいと思います。
目次(押すとジャンプします)
マンション購入の失敗例(想定外の価値低下)
ポイント解説の前に私が思う失敗パターンをご紹介します。そもそもマンションを購入する理由としては下記のようなものが挙げられます。
・賃貸で家賃を払い続けても自分のものにならない。
・毎月の家賃よりも住宅コスト(住宅ローンと管理費、積立金等の合計額)が安い。
・ローン契約時に団体信用生命保険に加入することで生命保険代わりになる。
実際に私もマンションを購入していますが、営業マンにこのような売り文句を並べられました。しかし、この売り文句ですが下記のような状態になればどうでしょうか?
・35年ローンを完済したときにマンションの価値が大幅に低下、または売れなかったら?
・管理費や修繕積立金が大幅に増額し家賃よりも高くなったら?
・マンションの価値が大幅に低下し生命保険の役目を果たすことができなくなったら?
当初はマンションを購入する理由となっていたものが、状況の変化により失敗例(想定外の価値低下)に繋がる可能性があるというわけです。そのリスクをできる限り軽減することができれば失敗する可能性は低くなりコスパが高いマンションを購入できることになります。ポイントをしっかりと押さえていきましょう。
購入ポイント3選

不動産販売の経験者の購入ポイントは多くの方が発信されていますが、私は管理会社の社員で長期間でマンションの収支を確認してきているので、管理の目線から考えるコスパ最強の購入ポイントをご紹介します。コスパ最強のマンション選びのcheckポイントは以下の3点です。
・立地をcheck!
・管理費の値上げの可能性をcheck!
・修繕積立金の値上げの可能性をcheck!
順番に解説します。
購入ポイント① 立地をcheck!
購入ポイント①は立地です。これは多くの方がご存じですよね。日本は少子高齢化により人口が年々縮小しています。人が少なくなれば家の需要が減少しますので、人気のないエリアはどんどん価値が減少していくというわけです。少子化の抜本的対策や海外からの移住者の大幅増加などがなければ、需要の減少、マンションの平均的価値の減少は必然というわけです。
さらに管理面からいうと居住者の高齢化や居住オーナー(そのマンションに住んでいる所有者)の減少により、役員の成り手不足の問題が発生します。
役員数は少なくても3~5名程度が必要となりますが、仮に50世帯のマンションで居住オーナーが半分、役員数4名で1年任期の場合、6年程度で役員の順番が回ってくることになります。
さらに高齢者のお一人住まいで役員活動に参加することが困難な人が増加すると、さらに分母が減少しますので、5年に1回、4年に1回と居住オーナーの負担が増加するということになりかねません。
快適なマンションライフを過ごしたいのに、マンションの役員をしなければならずご自身の時間がとられることとなります。
近隣施設や価格から想定するターゲットの年齢層(高齢者、40~50歳の準富裕層、子育て世代など)、投資マンションか実需マンションか(都心部、商業エリアに近いワンルームは投資向き)など立地から入居される方や購入される方の目的を想像しましょう。
ちなみに人気のエリアの探し方としては下記の方法がありますので、参考にしてください。
- 住みたい町ランキングなどで人気のエリアを確認する。
- 不動産屋で人気のエリアを確認する。
- 中古不動産サイトで近くのマンションの価格(値下がり幅)を確認する。
購入ポイント② 管理費の値上げの可能性をcheck!

購入ポイント②は管理費の値上げ要因の確認です。
マンションの毎月の維持コストとしては、住宅ローンや固定資産税の他に管理費や修繕積立金、駐車場収入などがあります。
『賃貸より月額コストが下がりますよ。』
という売り文句でマンションを購入したのに管理費が将来的に値上げしては思っていたことと違うということになるでしょう。では管理費が値上げになる理由は何だと思いますか。
消費増税や物価上昇ももちろん影響はありますが、それはどこのマンションでも共通です。
その他の要因で特に大きく影響を与えるのが駐車場収入です。駐車場収入が管理費と同じ一般会計に計上される場合は、駐車場収入が減少すると管理費を上げざるを得なくなります。
また、その駐車場収入が全体の収入に対して大きな割合を占めていると大幅な値上げを強いられることが考えられます。
さらに、近年、高齢者の免許返納や若者の車離れにより車両保有者が減少しており、多くのマンションで駐車場空きによる収入減少が深刻化しています。
加えて全台機械式駐車場ということになれば、収入は減少するのにメンテナンスは全台分が必要で費用ばかり掛かることになり一般会計が逼迫する原因となります。
駐車場については、空きが増加する要因として他にも多数あります。管理費の値上げ要因として下記のポイントをチェックをしましょう。
- 駐車場収入は管理費と同じ一般会計に計上?
- 駐車場台数は部屋数と比較し何%?
- (台数は少ない方が空き増加による収入減少の影響が少ない)
- 駐車場の種類は機械式駐車場か?
- (ハイルーフの車が増えており、約1.5mの高さ制限の区画が多いと空きが増えるかも)
- 駐車場使用料が近隣の駐車場と比較して高くない?
- (特に機械式駐車場の場合は、出し入れに時間がかかるため近隣より安い方が良い)
管理費値上げ要因となるポイントを購入前にチェックしておけば、大幅に管理費が値上げして
『こんなはずじゃなかったー!』という未来を防ぐことができますので必ず確認しましょう。
購入ポイント③ 修繕積立金の値上げの可能性をcheck!

購入ポイント③は修繕積立金の値上げ要因の確認です。
管理費の次は修繕積立金です。
修繕積立金の徴収方法には、「段階増額積立方式」と「均等積立方式」の2種類があります。
段階増額積立方式:段階的に徴収金額を増額していく方式(始めは安く徐々に値上げ)
均等積立方式:長期間にわたり一定金額で徴収する方式(始めから相場より高い)
大半の新築マンションでは、段階増額積立方式が採用されて販売されています。その理由はシンプルで、修繕積立金を安く設定した方が、固定費が安いことを売り文句に出来て販売しやすいからです。
販売時に引き渡される書類で、先25~30年間に必要となるマンションの共用部分の修繕工事やそれをまかなうために必要となる資金計画が記載された長期修繕計画表があり、こちらで4・5年毎に値上げすることを前提に販売がされています。
このことから、ある程度値上げすることは、適正なマンション運営には必ず必要なこととなります。しかし、この値上げ幅を少しでも縮小できないかチェックすることが重要となります。
新築時の長期修繕計画表でどの程度値上げが計画されているのかをチェックすることはもちろん、下記の設備は将来的に多額の修繕費用が必要となる可能性があるため要注意です。
- エレベーター
- ※25~30年頃にメーカーの部品供給停止によりリニューアル工事が必要となる。
- 世帯数が小さい場合や複数台設置されていて1台当たりの世帯数が小さい場合は、
- 各世帯にかかるエレベーターのリニューアル費用が高くなり多額の修繕積立金が必要。
- リニューアル工事費用:1台あたり 約800万円~1,400万円
- 機械式駐車場
- ※屋内か屋外かによってリニューアル時期は変わりますが、屋外の場合は20~25年、
- 遅くとも30年頃にはリニューアル(建替え)を考える必要がある。
- 機械式駐車場の台数が多ければそのリニューアル費用も高額になる。
- 建替え工事費用:1パレットあたり 約70~100万円
- 注:各自治体条例の駐車場の附置義務により、必ず確保しなければならない台数
- が定められている。空きが多いからと言って全撤去はできない場合がある。
- 免振装置
- ※地震大国の日本で免振装置は非常にメリットがあるが、更新費用もかなり高額。
- また、免振ゴムの耐用年数60年程度のため、新築時の長期修繕計画表には記載されて
- いないおらず、計画に反映させる時期には大幅な修繕積立金値上げの可能性あり。
- 免振装置更新費用:免振ゴムやダンパーの数量にもよるが、数億円になることも・・。
このように購入時にはセールスポイントとなる便利な設備ですが、長期で見るとリニューアル費用がかかるため、年数が経過するにつれて修繕積立金値上げを検討せざるを得ないのです。
エレベーターや機械式駐車場などは1部屋あたりの負担割合を計算し、他のマンションと比較することでコスパが高いマンションか低いマンションかを確認することができますのでチェックしましょう。
例① 総戸数30戸 機械式駐車場25台 エレベーター1台
<負担割合>
機械式駐車場 25÷30=0.83台/1戸
エレベーター 1÷30=0.03台/1戸
例② 総戸数100戸 機械式駐車場60台 エレベーター2台
<負担割合>
機械式駐車場 60÷100=0.6台/1戸
エレベーター 2÷100=0.02台/1戸
例②のマンションの方が、1部屋あたりの設備の負担割合が低い(コスパが高い)と言える。

最後に
新築マンション購入時には、ついつい部屋の中の設備にばかり目を奪われがちです。
また、交通インフラや市場、景気の変化により予期せぬ価値変動もありますので、今回ご紹介したポイント3選だけで確実に失敗しないとは言えませんが、少なくとも何も考えずに購入するよりは失敗する可能性はかなり軽減されることでしょう。
また、事前に想像できているのとできていないのとでは対応も変わってくると思います。
例えば賃貸の時より毎月の住宅コストが減少したのであれば、その分を使うのではなく将来の値上げに備えて貯蓄しておくなどの行動もとれるようになります。
目先のコストや設備だけで判断せずに、長期的な視野でのコストイメージを持つことで、コスパの高いマンションを選択できるようになりますので、是非参考にしてください。
また、マンション購入後の一般会計の費用圧縮方法や、マンションの工事で最高額の大規模修繕工事の修繕時期延長に関する記事も書いておりますので、マンション購入される方はこちらもcheckしてください。


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